節電エキスパート、稲垣えみ子さん著作「寂しい生活」を読んだら、言いたいことがいっぱいあった!

寂しい生活


元朝日新聞社記者。アフロヘアがトレードマークで、その徹底した節約生活が注目を浴びている、ミニマリストの代表みたいな方。そして、美容液の代わりに、700円のごま油を、お肌に塗っているひと。
2017年の著書「寂しい生活」を図書館で借りてきました。

節電生活を極めたら、ミニマリストになった

稲垣えみ子さんは、ミニマリストと呼ばれることを認めていらっしゃるかどうかは不明ですが、私から見たら稲垣さんの暮らしぶりはまさしく究極のミニマリスト。

ご自分では仙人の境地とおっしゃっています。

もともとは、東日本大震災の年、原発稼働停止となって電力不足が予測されるため、国を上げて節電に努めたことをきっかけに、自分も節電を極めた結果、電化製品をほとんど処分。
挙げ句、朝日新聞社を退職し、住まいも高級マンションから、収納のまったくないひと間の賃貸マンションへ引っ越し。
冷蔵庫や洗濯機の置き場もない小さな部屋なので、日々必要な食料しか買わない。生鮮食品を入れる冷蔵庫がないから、余った野菜は干す、またはぬか床につける。
お風呂は、近所の銭湯へ。
持っている家電は、パソコン、携帯、あとなんだっけ、書いてらしたけど忘れちゃった(笑)。
食事の簡素化も徹底していて、おかずは、干した野菜と味噌をお椀に入れて湯を注いだ味噌汁
ご飯は、カセットコンロを使って炊き、おひつへ入れてそれを温めることなくそのまま食べる。お味噌汁、ご飯、ぬか漬けの漬物が定番のご飯。
PC持ってカフェで仕事するから、電気代も殆どかからず、月々170円。
1,700円ではないですよ(笑)。驚きの三桁、170円。

物を持たない暮らしは趣味

最近のインタビューでは、まるで稲垣さんが世間にしがらみを捨てろ、捨てろ、と言っているみたいな記事が多いですが、すくなくとも、この「寂しい生活」では、「節電は自分にとって趣味」と書かれています。どこまでやれるかチャレンジしてみたら、極めちゃった。

その結果、「家電製品が家事を助けるツールといいながら、実は家事労働を増やしているのではないか」という思いに至った、つまり、人を豊かにするという名目で、「買わせ、使わせ、捨てさせ、また買わせる」という商業主義が仕掛けたラットレースにまんまとハマっているのではないか、というのがこの著書の趣旨。

質素に見えて、贅沢な暮らし

稲垣さんがおっしゃる「趣味の暮らしぶり」は、正直だれでも真似できるものではない。
まず、一人暮らしだから実現可能。

銭湯のことを、「460円でエンターテイメントが楽しめる、また地域の人達の助け合いの場」と絶賛されてますが、2人で行ったら920円。ひと月およそ3万円。
お風呂に3万円って(笑)。

昼間は、暑さ寒さを凌ぐために、カフェへ避難して常連になる。
勤め人だったら平日は会社へ行って、週末カフェへ避難するとなると、1回500円として2人で1,000円。週末2回行くとすると、ひと月8,000円〜10,000円。お安く見積もってですよ(笑)。1日1杯の飲み物で、何時間も粘れる強い気持ちがあればね。お店からは嫌われるだろうけど。

食事も、毎回、ご飯、味噌汁、漬物だけで満足するのか?
それでいいよと言ってくれる人と家族になる可能性って、かなり低いんじゃないかな。
それに食事ってコミュニケーションツールの大事なひとつなのに、人に振る舞うことを諦めているのはどうなのか。

稲垣さんの暮らしは、あくまでも極めた形で、こんな暮らしもありますよ、皆が皆同じ方向を向いて突き進むことが本当に必要なのか、考えてみましょうよ、ということなのだとは理解します、が、読後、見た目は質素だけどなんて贅沢な趣味って思っちゃいました(笑)。

箒を選ぶかルンバを選ぶか

雑巾と箒を使うようになったら掃除が好きになった、と書かれています。
重たい掃除機を出してかけたあと、またもとに戻すという行為の流れが嫌だったって。
これはわかる(笑)。
稲垣さんは、ぞうきんと箒の世界へ、私はルンバを選ぶ。
私が掃除機をかけるより、きれいにしてくれるから。
家電製品を使うのは、人力より良い仕上がりになるからという面が大いにあるし、その気持ちよさを手放すのはだれにでもできることじゃない、と思う(笑)。

著書内で、野菜を天日で干すと旨味が増す、おひつご飯は美味しいとあるのは、なるほどそうかも、と思い、究極に削ぎ落として行ったら残ったのは、人との関わりであった、という部分は全くそのとおりと感じました。

であるならね(笑)

じゃあ、家事労働は何のためにするのか。
自分を含めた家族を幸せにするためじゃないの?
時間をかけて美味しいものを作る、洗濯をする、掃除をする、などの家事労働が、女性を縛っているというのなら、男性も当然担うよねという教育をしたほうが、究極のミニマリストを目指さなくても、楽かつ安全に男女とも楽しく暮らせると思います。

運転免許更新時に、男性の方はこちら〜と誘導して、交通安全講習の合間に、家事労働がいかに楽しいか、また、嫌がられ、疎まれずに参画する手順なんて、指導してくれればいいのにねえ。

「寂しい生活」について、否定的なことばかり書いちゃったけど、これだけ読後に言いたいことがてんこもりになった本は久しぶり。
「お金持ちが、何いってんだか」と言いたいのではなくて、稲垣さんのポリシーは理解しつつも、凡庸な市井には実現し難く、だけど、フードロス、エネルギー需要・供給の問題、地域社会一体で暮らすことの利点など、読んでいて同意することが多かったです。
豊富なものに囲まれつつ、人との関わりを避けた自分本意な「寂しい生活」は、本当に幸せなのか?と問いかけた、刺激的な本でした。

今日のエントリーもまた長くなっちゃいました(笑)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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